【錦鯉の池の浄化について】
(1) 錦鯉nisikigoiを飼うにはその池の水を美しく保たなくてはなりません。 しかしそれは簡単なようでなかなか厄介な仕事です。 では池の水を美しくする浄化とはどのような設備をすればよいか?
(2) 錦鯉の池の浄化は比較的歴史が新しく本当の意味で鯉を飼う人たちに その必要性を説いたのは1970年頃に板谷俊生と言う高校の化学の先生 で、錦鯉の愛好家でした。 彼は「水は生きている~錦鯉と水~」(上/下、西日本教育図書、1971年)を 出版し、錦鯉の世界で初めて水を化学的に考える事を提唱しました。
(3) しかし錦鯉の水はただ化学だけで割り切れるものではなく今日でもまだまだ 手探りの部分が多いのが現状です。
その中でも鯉が美しく見える透明な水にする、機嫌良く育つ(濁った水でも 錦鯉そのものは機嫌良く育つ)、赤い色がより鮮やかになる、等の事はほぼ 解明されてきました。
(4) ここでは水を美しくする浄化の基本的なシステムだけを簡単に述べてみます。 微生物浄化、バクテリア浄化、自然浄化、生物濾過、etc いろんな呼び名が されていますが、だいたい同じような意味合いのことと考えて頂いて良いと 思います。
(5) 基本的にはバクテリア、微少生物、酸素の力を借りて水を浄化処理する 方法です。 ですから、池の中で生産される汚れの量とそれを食べてくれる微生物の 量のバランスがとれなければ成り立ちません。
池の水量、飼育されている錦鯉の総重量、単に健康に育てば良いのか、 うんと餌を食わせてどんどん大きく育てたいのか、目的と、条件によっても 浄化槽の大きさや循環水量は変わります。
ここでは池水1トンあたり5キログラム前後の錦鯉を飼ったと仮定し、2~3 トンから20~30トンの小さな池の浄化槽を考えてみたいと思います。
(6) 私は通常、池水1トン当たり濾過材(接触材)の表面積20平方メートルを基準 としています 。
例えば1立方メートルで250平方メートルの表面積が有る濾過材を使って
10トンの池を造ろうとすると、0.8立方メートルすなわち800リッターの濾過 材の 容積が有ればよい事になります。
したがってこの池の場合、1.5トン位の浄化槽を作り、その中にスノコなどで 仕切 ったスペースを800リッター分作り濾過材を充填して、その中に池の水を くぐらせれば良い訳です。
そこで最も大切なポイントはエアーレーション等で十分な酸素を供給 してやる ことです。(接触酸化法と言うこの方法は好気性細菌と言うエネルギーに酸素 を使うバクテリアにまず最初に働いてもらいます。)
(7) 微生物浄化にはこの他にいろいろな方法があります。 その中でも錦鯉の池の浄化に昔から一部で使われている方法に 散水濾床法 と言う方法が有ります。
(一般的に使われているのは 浸漬濾床法と言います)
池の外に水通りの良い濾過材(接触材)を積み上げその上から池の水を シャワー状に掛けます。 そうすると、その水が濾過材の中を流れ落ちます、単純ですがこれも非常に 合理的な方法です。
この方法の優れた点として、 濾過材の目詰まりによる嫌気分解が起きないこと そして 常 時酸素の豊富な水が上から落ちて来ることによって バクテリアがよく 働き、嫌気分解を起こさないことが挙げられます。
目詰まりの原因になる使い古されたバクテリアの死骸は流下する水に流され 下に落ちますから、その沈殿物を取り除くことで池水の浄化が促進されます。
いうまでもなく、この方法であっても飼育池から発生する汚れを分解してくれる バクテリアの必要量は、一般に使用されている 固定濾床法(浸漬濾床法)と 等しくなります。
(8) もう35年か40年近く前に鳥取県米子市の大成工業と言う会社が錦鯉の 水処理にFRP製の縦型で円筒形の中にヘチマロンのような物を入れて上から シャワー状に水を流すという浄化装置を販売していました。 今でも私の顧客で使っている人がおられます。
いろいろな浄化方法があり、それぞれ良い面と悪い面があります。 錦鯉を飼う愛好家は、それぞれ自分の考えを入れて自分の池に合った方法を 取り入れ、日々自分なりの工夫を重ねているのです。
上に述べさせていただいた「散水濾床法」にしましても、利点は沢山あります が、高いところに水を持ち上げるのにエネルギーがたくさん必要になります。 ですから、エネルギー効率の点から見れば、一概に「これが最高の方法です」 とは言い切れないのです。 店主